とある家のリビングに二人は居た。



















   ひま



















二人はリビングのソファに座り、彼女は本を、男は雑誌を広げていた。


はじめは男の部屋に行ったのだが、ゆっくりできそうにない有様だったので


リビングに移動して今に至る。


二人の間に会話はない。


それは別に怒っているわけでも喧嘩しているわけでもなくて。


ただ互いに、手にしている書物を読む事に熱心になっているだけである。


リビングに響くのはページをめくる音と、時折、足を組み替える時にすれて生じる


服の音だけ。



それがしばらく続いていたが、どうやら雑誌を読み終わったようで、男は軽い音をたてて


雑誌を閉じた。何をするわけでもなく天井を見上げたり、大きなガラス戸から見える


自宅の庭を眺めたりしていた。時折ちらちらと本を読んでいる女の方に視線を向けるが


女はそれには気づかず何の反応もない。


そんな空気に焦れたのか、男――――啓介は女に向かって声をかけた。












「ん?」











と呼ばれた女は視線は本に向けたまま返事を返す。












「暇なんだけど」


「ん〜」













啓介はその後の言葉を待ったが、はそれきり何も言おうとしない。


が読書好きなのは知っていた。その集中力も。


それでも、せっかく二人でいるのだから少しはかまってくれても…と


啓介は思う。













「…俺は寝るからな」


「……」













返事はなかった。


少しムッときて口を尖らす。


好きにするぞというようにゴロッとソファに横になった。


頭をの膝の上に置いて。












「啓介…」












ちらっとが本から目を離し、啓介を見る。


その困ったような表情を見て啓介は内心で「やった」と思う。


が、それもつかの間。はすぐに視線を本へと戻してしまった。














「別に良いからあまり動かないで」


「……」












この位置からだと本が邪魔しての顔は見えない。


変わりに本の題名が目に入ってくる。


青っぽい色のカバーに書いており、髭のはえた人の絵と


二という数字(つまり、二巻ということだろう)も書かれていた。


啓介は、全然知らねぇと思いつつ「あまり動くな」という言葉に当てつけるかのように


体の向きを変えた。


目の前にテーブルと入り口のドアが見える。


することがなくなり、本当に眠ってしまおうかと瞼を閉じた。


最近遅くまで起きているので、数分もしない内にウトウトしはじめた。









半分起きているという状態でいると、髪に違和感を感じたので意識をそちらに向ける。


啓介ははが自分の髪を撫でているのだということに気づいた。


頭を少しまわし体の向きも上向きにすると、その彼女の手を自分の手の中に収め、握りしめた。


そして、彼女の手を開かせ人差し指・中指・薬指…と順番に曲げていったり、


指の間に自分の指を入れて手を握ってみたり。






しばらくそうやって、おもちゃを与えられた子供のようにの手で遊んでいた。


ふと、の表情を見てみたいと思ったが、また本に邪魔されて見えないんだろうなと思い直す。


が、やはり気になりそっとうかがうように視線を向けると。


本の底を少し上げてがこちらを見ていた。


眉を下げて、しょうがないなというように笑いながら。


二人目が合うと、クスッと笑った。



が啓介の手を握り返す。が、またすぐに本へと視線を戻してしまった。


それでも啓介はなんだか嬉しくて、目を閉じて自然と微笑んでいた。
















「お前ら、いちゃつくなら部屋でしろよ」


「「 へ? 」」












帰ってきたのであろう涼介が、リビングのドアの所で呆れた表情をして立っていた。




















   END










夢主が読んでいるのは、何を隠そう『岳飛伝/田中芳樹 編訳』の二巻です☆
皇さんの絵が素敵すぎですv
図書館で借りてきて、読んでいた時にこの夢を書いていました(笑)
かなり面白いですヨ!!
管理人、岳家軍では湯懐さんが好きですv(聞いてない)

って、内容!
えと、ちょっとしたことを書きたくて…こんなのになりました(苦笑)
今度は男主人公で書く予定なので、嫌いでなければそちらも読んでやってください★

                                 ++美空++