足音がすぐ近くで止まった











夕日










「捜したぞ、

「 殿 」

「ああ、雲長たちと居たのか」

「はい。ちょっと話をしていたのですが…急用で?」

「いや、姿が見えなかったからな。どこへ行ったのかと思っただけだ」

「それはご足労を……」

「いや、かまわぬ。…何を話していたのだ?」

「殿、聞いてくれますか!?」

「ん?」

「関平って嘘つきなんですよ!」

「ははは!それは義父親に似たのかもしれぬな」

「え?」

「雲長も実は嘘つきでな」






茜色の日差しが私たちを照らしている






「…関将軍を嘘つき呼ばわりできるのは殿ぐらいですよ」

「うん?そうかもしれぬ…いや、翼徳も言えるであろう」

「張将軍は面と向かってではなく、陰で言ってそうですね」

「そうかもしれぬな!」






ふと、優しい香りがした







「あ…それは」

「ああ、ここは殺風景だからな。を捜すついでに持ってきたのだが」

「綺麗な花ですね。私が飾りましょう」

「うむ。雲長は時間があれば鍛錬をしておるからな。花を愛でる時間も必要だ」

「そうですよ!しかも、それに付き合って関平も鍛錬ばかり!たまには息抜きしないとね」






二人、天を仰いだ


天井は、ない


目前に広がるのは、茜に染まった空と雲


星はまだ見えない







「……息抜き、か。しているだろうか」

「……むこうでは、することないですもん。きっと親子でこの花を愛でてますよ」

「だと良いが……は関平と何と約束したのだ?」

「…殿たちと同じようなことを」

「死ぬ時は共に、と?」

「…少し違いましたね……」






が死ぬ時は、拙者が傍に居るから!」


君は笑ってそう言った






「……嘘つきだな、関親子は…」

「私もっ…嘘つきなんです。関平が死ぬ時は傍に居るって…約束し……っ」



「やだ…っやだぁ!置いてかないでよ…ぉ関平っ!!」






「じゃあ、関平の最後の時には傍に居るね」


私も笑ってそう言った


でも最後に見た君の姿は、すでに二度と笑うことのない首となっていた







「雲長……私もあの時共に生を絶てば、誓いは果たせた事になったのだろうか」






「生まれた時は違えど、死ぬ時はそろって同じ年!」


あの時の声は鮮明に思い出せる






「なっ…駄目ですよ!一国の主がそんな簡単に―――っごめんなさい…」






「同じ月!」


もう一人の義弟の声が続く






「……結局、乱世にはこのような約束事は通用せぬのか…」






「同じ日と誓う!この桃園の下で!」


あの時は一面に桃色が広がっていて


この景色をまた三人で見られたらと思った







「――――それでも私は誓います」

?」

「決して……決して、殿より先に逝かんと」

「っ……」

「ここ、二人の墓前にて…誓います」






名前の刻まれた薄灰色の石の前


女はすっと片手を胸の前へ伸ばした


男はその手の上に自分のを重ねる







「……約束したぞ」

「約束します」

「…雲長たちが証人だな」

「ええ…」






二人が、すぐ傍に居るような感覚がした






「兄者ぁ〜〜!!」

「翼徳が呼んでいるな。私はそろそろ行くが…」

「では私も」





踵をひるがえし、二人に背をむける


数歩だけ歩いた時、追い風が吹き抜けた


それは優しくて、まるで背を押してくれたようだった


体半分振り返ると、淡い色の花が揺れていた























「待っていて。…そっちに行くのは遅くなるけれど」






















待っていて。





















夕日が もうすぐ沈む














    END







関平夢というか、劉備夢?蜀夢?!(何ソレ)
嘘つき呼ばわり…スミマセン!!;;

さて、彼女は約束を守れるか否か。。
その辺はサマ、あなたの考えるがままに……。
読んで下さってありがとうございました☆

                   
                    ++美空++