「陸遜っ!――っおい陸遜!! 」
我らが軍師を呼び止める甘寧。が、いっこうに歩を止める気配がないので
肩をガッと掴んだ。
「甘寧……殿?」
「ったく、止まれよな!……周瑜さんが緊急に話があるってよ」
「…そうですか。分かりました」
ちゃんと伝えたからな〜と言って、目が陸遜の服にとまる。
「ん…?お前、何でそんな服なんだ?」
いつもの赤い服ではないのだ。
「…洗濯して乾いてないんですよ。それくらい頭回りませんか?」
「 ?! なっテメェー陸遜っっ!! 」
サラッと暴言を吐いてスタスタと歩いていく陸遜。
その言葉に拳を震わす甘寧であった。
鏡
「お、陸遜。来たな」
「では説明を始める」
部屋の中では、周瑜と呂蒙が待っていた。
陸遜が席についたのをみると周瑜が、緊急に話し合いの場を設けたわけを話し始めた。
「……という事で、今後に備え策を考えておきたいのだが…何か案はあるか?」
「そうですね…私は個人的に単騎で突入するのが好きなのですが」
「陸遜……?」
「多くの敵を切っていく快感!加え、敵に囲まれていつ死ぬか分からないという
緊張感がたまりません!」
「り、陸遜…?お前今日は何か変だぞ…?」
「火計の“か”の字も出ないしな…どうかした…のか?」
いつもと違う様子の陸遜に、恐る恐る尋ねる二人。
それを聞いた陸遜はハッとしたかと思うと
「あっ……!! つい自分の趣味で…」
意味不明な事をつぶやいた。
おかしく思った周瑜が尋ねようとすると、勢いよく扉が開け放たれた。
入ってきたのは――――
「失礼っ!!………やっぱり」
「「 陸遜?! 」」
「…なぜあなたがここに」
“”と呼ばれた陸遜(?)はニッと笑って悪びれもなく言う。
「やぁ兄さん、暇だったからさ〜」
はあっと盛大にため息をつき頭をおさえる陸遜。
周瑜と呂蒙は、何が何だか分からないといった顔で陸遜を見る。
二人のその顔を見て、ツカツカとの隣まで歩き二人を振り返る。
「ご紹介します。双子の弟のです」
「字はでっす」
「「 双子ぉおお?! 」」
一呼吸おいて二人がハモる。
そんな二人から視線をに移す。
「何でここが分かったんだ?」
「甘寧殿に聞きました……怒ってましたよ。何言ったんです」
「へ?何言ったっけ……あぁ、服がいつものその服と違うのはどうしてだって
聞いてきたから、洗濯して乾いてないんだって言った」
「…それだけではないでしょう?それでは彼が怒る理由がない」
「あとは思ったことを言っただけだよ。それくらい頭回らないのか―――ってね」
「…それですね。まったく、あなたって人は―――」
まだまだ続きそうな兄弟の会話に割ってはいるように周瑜が咳払いをした。
「話しを…始めても良いかな?」
「あっすみません!…とりあえずは執務室へ行っててください」
「はーい」
嵐が去り、話し合いを再会した。
緊急にこの場を設けたわけを再度話し、周瑜は陸遜に案を求めた。
「何か良い案はないか?」
「火計はどうでしょう」
「「 陸遜…… 」」
笑顔で即答した陸遜。
その答えが予想通り過ぎて、そっと涙する二人であった。
◇ ◇ ◇ ◇
コンコンッとノックして執務室に入る。
椅子で三角座りをしていたが陸遜に気づき、読んでいた書籍を閉じた。
「もういちど聞きます。どうしてここに来たのです?」
「神様の思し召し」
「…そんなふざけた冗談を言うのはこの口ですか?!」
「いたゃい!」
陸遜はの頬をつねり、ごつんと一回頭突きをする。
すこし涙目になったは陸遜をじろっと睨んだ。
「…痛い」
「が馬鹿なことを言うからですよ。…さっさと帰ったらどうです?」
「ひどっ!仕官しにきた弟に向かって!」
「弟だから嫌なんですよ。この微妙な胸の内を分かってほしいですね」
はあ、と一つため息をつく陸遜。
そんなつれない兄の態度に、は拗ねたように口をへの字に曲げる。
「だいたい、いきなり仕官など―――」
「そんなつれない事言ってると、ちゅーするぞ」
その言葉に陸遜は少し目を見開くが、すぐににっこりと笑みを返した。
…かと思うと目を細め―――――
「…燃やしますよ?」
「勘弁して下さい」
思わずは土下座をした。
冗談なのにさっ!と心の中で一人毒づいてみる。
聞こえたわけがないのに、陸遜はジロッと睨んできた。
( マジ怖ぇ… )
引きつった顔で目をそらしたに、陸遜は再度ため息をもらす。
そして、“わかりました”と一言つけたした。
「えっ―――?」
「明日、殿に紹介しましょう」
賛成を期待していなかったは、兄の言った事の理解が遅れた。
「……え?ホントに??」
「…あそこまで派手な登場をしておいて、ただの冷やかしでした、では陸家の恥です」
というか、私の首が飛びそうです。
そんな陸遜の嘆きなど耳に入らないは、やった!!とはしゃぎ、伯言ありがと〜と手をとる。
それだけじゃおさまらず、良い子だ〜と頭を撫でてくる始末。
「なっ、なんですか!この扱いっ」
なおも撫でてくるの手から逃れるように身をよじり、頭を自分の手で守る。
その後、二人は日が傾くまでギャーギャーと騒いでいた―――。
翌日、は孫呉の一員となった。
「はぁ…前途多難ですね……」
「?何が?」
「いえ……」
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陸遜の双子弟設定…やってしまいました。
誰かの兄弟、養子、拾い子設定など…多くなると思われます;
はじめ、弟クンと恋愛してもらうつもりだったのですが、
さすがに濃いカナーと思いまして;
ギャグに直しました。
甘寧、これからもかなりでばってくるので、
またか、と思いつつも読んでくださると嬉しいです;;
++美空++