彼女はとても忠実である。



……否、忠実という言葉で片づけられるほども

彼女の胸の内を理解できていないだろう。

きっと、誰もが。






















 憎しみの果てにあるもの [2]   



























「…罪は罪だ。内通者は斬る」








劉備は剣を取り、目の前の内通者にゆっくりと歩み寄る。

相手は一度劉備の顔を見上げ、覚悟を決めたように目を伏せた。

それを見た劉備は剣を構え、つい先日まで共に戦った仲間に

剣先をむける。

心の底にあるためらいが無意識に出たのか、

気づかれない程度に小さく剣先が震えた。

剣の柄を強く握り振り上げ、首もとめがけて振り下ろした。

────振り下ろそうとした。












「お待ち下さい劉備殿。私にやらせて下さい」














が一歩前に出て、大鎌を手に歩み寄ってくる。

少し離れた後ろで護衛のも控えていた。














「この者は私の隊の者。私が引導を渡しましょう」

「しかし…」

「…殿、お願い致します」















男は目を伏せたままの名を口にした。

はそれに答えるように大鎌を振り上げ、勢いよく振り下ろした。

首と胴が切り離されて地面に落ちる。

あっという間の出来事に皆息をのむが、斬った本人は

涼しい顔をして鎌の血を拭っている。






















   
殿にお願いがあります   




















……」

「兄者。残念ながら、こういった者はこれからもでてくるでしょう」

「うむ…」

「…その時は全て私にお任せ下さい」

「そなたはっ…何とも思わないのか?!」

「何を思えと仰るのです」


















ああなる者は劉備殿に背いた者だというのに。

そう、背いた者――――

















   
私を処すのは……

















「…ならば貴殿に任せよう」

「雲長っ」

「兄者?!」

「どのみち誰かがやらねばならぬ事。
ならば望んでいる者にやらせれば」

「それはそうだが…しかしっ」

「かまいません」

……」

「おめぇ、そりゃあ趣味悪いんじゃねぇか…?」


















即答で答えたに張飛が呆れた声を出す。

その言葉に返事は返ってこなかった。

かわりに小さく口だけで笑い“これを片づけてきます”と

地面に転がっていた首を表情も変えずに持ち上げ

胴体の腕を掴み引きずっていった。

も少し遅れて後を追う。

















   死神だ────   
























誰かがそう小さくつぶやいた。

彼女はこの日から“死神”の異名を持つようになる。



















人を惹きつける容貌を持つ彼女は 

何を考えているのだろうか

何を思って彼を処したのだろう

何を思ってあんな事を申し出たのだろう

何を思って───戦などに参加しているのだろう

誰も彼女とういう人間を理解できていない。

……理解できない


















  強い忠義心を持った死神は

  それの強さゆえに誰とも相容れない

  誰も寄せつけない


















殿……」

…?」

「私も…手伝います」

「…ああ」











土を掘り起こしていたに、が静かに声をかけた。






















   
処すのは……あなたが   













  Next






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  殿自ら人を処したりするんですかねぇ?;
  間者を一番に見つけたのは夢主なんです。
  だから、処すのは発見者であり、
  上官である夢主にお願いしたい、
  という事なのです;

  お次は趙雲登場予定。。